Jeanne 354


●   キクプロジェクト with M・I   ●


ジャンヌ354

美世(ビヨ)へ


2018年8月9日(木) – 8月12日(日)
13:00〜17:00
※最終日は19:00までクロージングイベント有り

単に高知市の郊外と言うだけではこぼれてしまう何かを、この地域に求めて散策していた時の事だ。仕事の一段落するのを待って声をかけると、フクジンソウという花の名前を教えてくれた。労をねぎらうと、近頃ではみんなお嫁に行ってしまって(畑から離れてしまったのだ)と、当世を嘆いて見せるのだった。

 写真は断られている。撮影された人の生にとって写真が一体何の為になるのか、カメラを向けられた時のあの虚ろな時間、それらに対するじゅうぶんな答えを、私はまだ見出せていない。

 次の朝ものこのこ出かけて行ったのは、それでも諦めきれなかったからだろうか。そこに居たおじさんは、彼女に土地を借りる形で畑を営んでいるという人だった。長い間荒れ放題だった場所だから、彼の炊く煙を山火事と勘違いされた事もあるらしい。その折はヘリコプターまで飛んで来たのだと云う・・・・

 キクプロジェクトが「高知のジャンヌダルクの父」という展覧会を行ってから、今年で10年になる。私たちはそれ以前から、窪川に住む当時16歳の女の子の家庭の問題を、一緒になって考えるということをして来た。そしてジャンヌの役を彼女にキャスティングした2008年、父親の仕事の廃業など他の諸事情とも相まって、彼女は飛躍的な展開を遂げたのだった。

 神の声を聞いた娘、男装して闘う娘のイメージは、そうやって現代においても共感を呼ぶものだ。が、他の多くが闇に葬られていると言える中で、どうしてジャンヌ一人が生きながらえているのだろうか。今度のEquivalentの展覧会では、10年前の自分達を振り返りながら、その歴史の言説の検証へ繋がる事が出来れば、と思っている。

西村知巳



キクプロジェクト with M・I

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西村知巳
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